料理撮影の豆知識
今回はシール印刷について、ではなく私の前職で得た豆知識をお話させていただきます。
約10年前まで全国チェーンのファミリーレストラン本部の販売促進という部署で仕事をしておりました。
各メディアへの広告出稿から、キャンペーンの企画・立案、そして店内で使用するメニューブックやポスター、ちらしなどの製作です。
メニューツールの製作では料理メニューの撮影~デザイン~校正~印刷~納品と、広告代理店の方、カメラマン、デザイナー、印刷業者と毎日のように打ち合わせしていました。もちろんステッカーやメニュー訂正シールなどの製作もしていましたが、当時はその後シール印刷業に転職するとは考えてもいませんでした。
毎月のようにメニュー変更がある会社でしたので、月に一回は数日間撮影ルームにこもり料理をメニューブックの平面の世界で美味しく見せるためにいろいろな工夫をしたものでした。
重要なのが、決して『現物以上の過度な装飾をしてはならない』ことです。全国どのお店でもメニュー写真と同じように美味しい料理を提供しなければならないためですね。撮影時の『美味しく見せるための工夫』のさじ加減が難しいところでした。
さて、本題に戻りますが料理は熱いものは熱く、冷たいものは冷たい『時』を撮るのが鉄則なのは間違いありません。
ですが『美味しい時間』は短いものなのでさまざまな前準備が必要となります。
『シズル』という言葉をご存知でしょうか?メニュー撮影チーム内では『シズル写真』と言ってましたが、たとえば鉄板の上のステーキがジュージューと音を立ててソースが弾け、湯気がもくもくしている様の写真のことです。
この湯気ですが、実はドライアイスの煙です。本当の湯気はカメラでとらえることが難しい(写真に写らない)ためです。
以下、上記のような料理撮影豆知識を列記します。
・パスタ料理は先に麺を皿に盛り、具材をその上に盛り付けていく。
・サラダは撮影の直前にさっと霧吹き。
・ハンバーグやドリアやグラタンなども表面の照りを出すため撮影直前に水を筆で塗る。
・ビールのきめ細かい泡は超音波機で泡立てて作る。
・味噌汁は塩をたっぷり入れ混ぜ、具が表面に浮くようにして撮影する。
・アメリカンコーヒーはそのまま撮影すると真っ黒になってしまうため、2倍に薄めて撮影する。
・グラスの冷えた様は霧吹きでは表現不可能。本物の結露を出すまで時間がかかるためそのようなシズル写真を撮る際はダミーの氷を使う。このダミー氷、買うとなると一個数万円~なのでレンタルして使用。
・炭酸飲料を撮影する際は未使用のきれいなグラスでないと泡がグラス面につきずらい。
・アイスクリームはあらかじめドライアイスでかちかちに固め、撮影時にストローで息を吹きかけて表面の霜をなくして撮影。
・その料理の最も訴求したい内容に合わせて撮影角度、盛り付け方、ズームイン、アウトを決める。
まだまだあったと思いますが、もう忘れてきてしまっているので以上でお終いです。